chronoireのアニメメモ

面白いアニメ全部MIRO

『フラクタル』を見た。

ずばり見どころは、

山本寛自らして「何をやりたかったんだろう?」と言わせたアニメ。「新しいことがやりたい、今のアニメと違うことがやりたい」と発表当時や放映時は強く語っている。(例えばOP映像がアレなのは、その一環だ)しかしそのくせ、設定は既存作品のなぞり、メッセージはありきたり、いかにも迷子に見える。

  • 登場人物の行動原理が伝わっていない:存在しないように描いているのではなく、そこにあるし、だから確固たる行動をしているはずなのだが、それを視聴者に伝えることができていない。そんなことわざとやる理由がない(登場人物が行ったり来たりする、そのベクトル転換に物語の大きな境目が存在しない)。例えば、なぜ3話でフリュネは僧院のババア達のところにやってきたのか?その後はなぜグラニッツと一緒にいるのか?コロコロ向きを変えるのは悪手だ
  • 物語の向かっている先がもやもやしている:これはわざとやっているのだろう。良くも悪くも。個人的には悪い方向に働いたと思う。
  • そもそも世界設定が終わっている。「そもそも話は明確にどこに向かうべきなのか?」というところに本作の勝負があるのならば、なぜこんな陳腐で使い古された設定を選んだのか。宮崎駿リスペクトやりたかっただけだろ
  • それを調理することもできていない。グラニッツらは銃で僧を含めた民間人を殺しまくるが、その直後にこちらがわのキャラが一人死んで皆が悲しむシーンになる。視聴者が感情移入できていない時点でそんなアンバランスなことをやるかね?このような展開の稚拙さは枚挙にいとまがない
  • 僧院が破壊されたからもう再起動はできないねw→じゃあ自足自給を始めようというオチは最低だ。そもそも数千年という時間軸を設定したくせに、その間世界を管理している僧院が簡単なウイルスと爆弾で破壊されるのか。どこまで視聴者を馬鹿だと思っているのか。その後に導き出された答えもロストミレニアムの真の存在意義を真っ向から否定している。僧院を破壊することではなく、真の人間らしさを後世に伝えることだったんだ→でも結局「僧院を破壊して」物語終わってますよね?フラクタルの支配→労働の支配に変わっただけでは?人間らしさは労働?
  • 勝手に自由なんちゃらとか言うな、浅い
  • 一番最後に鳥が一羽飛んでいったのは、全員で一緒に暮らしているから?三羽飛び立たせると、フリュネとネッサがくっついたことを否定するし、二羽だとネッサはどこ?ってなるためか?苦しい
  • 僧院のおばさんのことも良くわからなかったし、そもそも初期のころのフリュネと後半のフリュネの同一性を感じられなかった。僕の感受性の問題ではなく、山本寛が迷子になっていたせいだと思いたい

 

アニメ評論家 氷川竜介氏による「フラクタル」の山本寛監督インタビューまとめ - Togetter

  • ヤマカン「そもそも話は明確にどこかに向かうべきなのか?という所に本作の勝負があるのです。なかなか解ってもらえませんが……。
  • 氷川「物語のあり方、それ自体も語ろうとしているということですか?
  • ヤマカン「そこまで大上段な議論ではないです。でも小説やら、実写映画では、すでにこういう形態の作品はごまんとあると思うんです。そう言えばアニメはほとんどないな。どうしてだろ?というのが『フラクタル』の起点のひとつになっています
  • ヤマカン「まぁ簡単に言えば「狙って」作るのならば真逆の戦術を考えられた訳で。しかしどこかでも言った通り、この作品は「覇権」なる俗語に全力で背を向けることで成り立っています。新しさ、というとどうも語弊があるのですが、そうしないとアニメの未来は切り開かれない、と真剣に考えた末の表現です。
  • 氷川「そうした思いと「フラクタル」ってキーワードは、どんな関連にあるのかなと思いながら見てますが、そこはどうですか?
  • ヤマカン「何かの確たるモデルやスキームありきで世界を語るのではなく、茫洋である意味カオスな世界を生々しく捉えてみよう、という思いがあったのです。それと「フラクタル」という概念が一致しました。
  • ゲイル(彫刻家)は村上隆への最大限のリスペクトらしい。どう見ても今のヤマカンだけどね

神戸守絵コンテ抜粋 2話 (以下全て©フラクタル製作委員会)

ここのクレインが走って向こう行くカット、クレインにつられてカメラのピントが移動している。

こんなに広かったか?←こっちのセリフ

やっぱ平原はいいね

イマジナリーライン越えてるのは昼の星をバックに入れたいから?



神戸守絵コンテ抜粋 8話 (以下全て©フラクタル製作委員会)

対面する親子 距離感を出す

暑苦しさ

このアングル。嫌悪感と冷たい感情がありありと伝わってくる

クレインのことを話すと横からのカットに戻る

この顔

距離感

為す術もない無力感のアングル

対比

この数分間、このいくつかのアングルからのフィックスしか存在しない。絵コンテに自信あり

なめものを配置しないと死んじゃう病

開脚

足は閉ざされ間にネッサがいる

クレインが包帯フリュネを押し留めるシーン、クレインの手前に水槽を置く。フリュネとの温度差

この水槽が動くことでクレインがすこしずつ押し出されていることが分かる。こうしないと、マヌケな絵になる。

クレインとフリュネのやり取りで温度差が緩和し、同じゾーンにやってくる

クレインとフリュネの間を割くキャラクターが文字通り間を割いている

名カット