chronoireのアニメメモ

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ドロヘドロを観た

 

 

ドロヘドロを観た感想:

1.世界観に深みがあり魅力的

このアニメには魅力がある.当初はキャラクターに魅力を感じていると思っていたのだが,これは作品全体に対しての感情だと後に気づいた.ドロヘドロはグロテスクかつポップという2つの両極端な表現をふんだんに用いてその世界観を表しているが,これが作品に大きな深み(つまりギャップ)を与えており,視聴側はぐんぐんと引き込まれる.

グロテスクな行動をさせる際,表現をポップなものにして見る側にストレスを与えなくするというのは湯浅の好んで使う表現であるが,ドロヘドロの場合はそれがより拡張されていて,グロテスクさとポップさがシーソーのように釣り合ってバランスを保っている.ポップなモチーフはもはやグロさを押さえつけるどころかその異質さ(現実世界からの解離)を引き出す役割を持っており,表現の緩和で親近感を与えさせるどころかあえて切り離すことでなんかしている(具体的な言語化が出来なかった...w)以下一例.

グロテスクなモチーフ:悪魔,人をバラバラにする魔法,虫に変える魔法,地獄,蝿,臓物,ゾンビ,顔の皮を失った女,ジョナサン

ポップなモチーフ:餃子,きのこに変える魔法,ドア,頭がとかげの男,ガブッと噛み付く,キクラゲ

上の例で特に面白いことは,ホールにジョナサン(グロテスクな怪物)が住み着いて,魔法使いの世界にキクラゲ(ポップなペット)が住んでいる点だろう.始終魔法使いは人間とは相容れない本質的に違う存在であるということが語られているにも関わらず,ホールで暮らす人間たちに現実世界で暮らす我々が自己投影をすることは許されない.つまり,魔法使いの世界とホールが違う世界であるのと同じように,ドロヘドロの世界は我々の暮らす世界と本質的に異なっており,この,「人間が暮らしている」が「こことはぜんぜん違う」というギャップがこの世界観の魅力の本質であろう(この構成は作品内の設定からメタ的なレベルまで何重にも張られている).これは,主人公であるカイマンが人間臭さとトカゲ頭という両立し得ないカオスを保有していることからもわかる(ドロヘドロの世界は常に混沌としている,そしてその混沌の中にあるものはポップさとグロさのギャップ=魅力なのだ).

2.ぶれないあらすじとその道中

各話ごとに話しの山と谷があり,それらを内包した大きなストーリーの筋書き(カイマンは自分の顔と記憶を探す)があり,良い.ネトフリはさっさと最後まで作らんかいw

3.アニメとしてのドロヘドロ

  • 能井という女:漫画ではマスクを脱ぐまで女だとわからず,それがマインドファックしていたらしいのだが,アニメでは小林ゆうのおかげでバレバレであった.
  • 騒がしい画面:漫画では,コマの中の空白に他のキャラを入れてなにかさせるということが簡単にできる(動かすリソースがいらないため)けど,アニメでも同じことをやれていてネトフリの資本力を感じられた.とくに,スポットがあたっているキャラクターを他のキャラが目で追う,その際になにか違う動きをしているなど,より人間に近い表現が感じられた.
  • アニメ独自の表現:このアニメは漫画の内容に沿っており,オリジナル要素に乏しいのではないかと最初は思っていた.でもそこであえて映像でしか出来ないような表現をいくつか入れてこられて,やるやんってなった.特に,ミートパイを売り始めるときのタイムラプスはきれいで新鮮だった.